
老人と海
アーネスト・ヘミングウェイ
The Old Man and The Sea
Ernest Hemingway
アーネスト・ヘミングウェイの代表作のひとつ。
老漁師の巨大カジキとの三日間にわたる死闘が、迫力ある文体で展開される。
英文はセンテンスがシンプルで簡潔なので、理解しやすい。
一つ不思議なのは、老人は出漁前にコーヒーを一杯飲んだだけで、小舟には水のボトルが一本しかない。
昔の人は気合いと根性で、熱中症さえも乗り切ったのだろうか。

夜中に犬に起こった奇妙な事件
マーク・ハッドン
The curious incident of the dog in the night-time
Mark Haddon
主人公はアスペルガー症候群。こだわりが強く、人の表情を読むkことが難しいためにコミュニケーションが苦手。一方数学と物理が得意。そんな彼が、奇妙な事件に遭遇し、解決しようとすることで成長していく物語。
目に見えるものしか書かず、比喩は使わないので、英文は理解しやすい。
アスペルガー症候群の彼に世界はどう見えるのか、興味深い。

バスカヴィル家の犬
コナン・ドイル
The Hound of the Baskerville
Arthur Connan Doyle
バスカヴィル家の当主は、屋敷の外に広がる荒涼とした荒れ地ムーアの入り口近くで、心臓発作で死亡する。バスカヴィル家には古くからの魔犬伝説がある。
彼の死は病死なのか、この伝説と関係があるのか、ホームズとワトソンが様々な視点からこの謎の解明に挑む。
英文は二重否定や丁寧な表現が多用され、悪く言えばまわりくどいが、読む者を惹きつける魅力がある。

Beyond Belief
Josh Hamilton
元メジャーリーガー、ジョシュ・ハミルトンの自伝。
天才野球少年と謳われ、ドラフト一位でメジャーリーグに入団。入団二年目に交通事故で負傷、療養中にタトゥーパーラーに入り浸るようになり、全身にタトゥー、誘われるままにコカインを始める。その後四年間コカインとの苦闘の日々が続くが、奇跡的にメジャーへ復活し、MVPを五度獲得する。
なぜコカインを始めたか、コカイン中毒とはどのような状態なのか、そこからどう立ち直ったか、克明に表現されている。
英文は心理描写が多いので分かりにくいところもあるが、表現そのものは比較的理解しやすい。
翻訳がないので、邦題はない。
つけるとすれば、「奇跡の復活」だろうか。

メモリーウォール
アンソニー・ドーア
Memory Wall
Anthony Doerr
七編の短編が収められためられた短編集。
いずれの短編も、南アフリカ、アメリカ、リトアニア、中国など、背景が異なり、テーマもまた認知症、人種差別、不妊治療、自然人類との共存と、一人の作家が書いたとは思えないほど幅広い。
状況描写の的確さ、表現のユニークさには、時々うならされる。
読み応えのある一冊。

春にして君を離れ
アガサ・クリスティー
メアリー・ウエストマコット
Absent in the Spring
Agatha Christie
Mary Westmacott
アガサク・クリスティーの小説だがミステリーではない。彼女は生前、自らの内面を表現した一連のの小説をメアリー・ウエストマコットという別のペンネームで発表した。
ロンドンに暮らす中年の主婦が、出産を控えた娘の住む中東に向かう。その帰路、雨で橋が流されたために、砂漠の真ん中に一人足止めされる。
何もすることがない彼女は自分の内面と向き合うしかない。
20年前高校生ばかりを教えていた頃、推薦入学を早々に決めた生徒さんとこの本を読みました。読み始めてすぐに「高校生には10年年早い」と後悔したのですが、同時にこれを大人の方と読んだらすごく面白いだろうと思いました。大人のための英語塾を始めるきっかけとなった、記念的な一冊。